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考える場所

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「灰と幻想のグリムガル」第10話で考えた、自分は正しいという思い込み

grimgar.com

「灰と幻想のグリムガル」第10話が示唆に富んだ話だったので紹介したいと思う。

灰と幻想はRPGのような世界で、主人公らはパーティーを組んでモンスターを狩りながら生活をしている。この、"生活をしている感"をよく表現しているのが灰と幻想のおもしろいところだ。ランタはお調子者の暗黒騎士で、いちいち口が悪い。物語の冒頭こそランタはただのお騒がせキャラをやっているのだが、主人公のハルヒロがいよいよランタに話し合いをもちかける。

お前さ、なんて言うか、どう思ってるんだよ、パーティーのこと

パーティーはパーティーだろ、それ以上でも以下でもねえよ

なんだよ、それ以上でも以下でもないって

なんだ、俺は自分の役割をきっちり果たしてるつもりだがな

そうか?

やってるだろうが。今日だって俺一人でも一匹くらいならやれるって証明してみせただろ

あんなの、みんなで囲めば一瞬で終わったんだよ

いつもそうできるって保証あんのか?ねえだろ。俺が確実に一匹引き受けられれば、なんつうの?幅?戦術の?みたいなのができるだろ?

ここでハルヒロがすこし冷静になるが。

わかんねえだろ?そういうの、言ってくんなきゃ。何かあってからじゃ遅いんだからさ

いちいちお伺い立てろってか

そうは言わないけどさ、口に出さなきゃ伝わらないこともあるって話をしてるんだよ。ただでさえお前は、誤解されやすいとこ、あるだろ

へっ、どうせ誤解だとは思ってねえんだろ?俺のせいだって言いてえんだろ、俺が、なんだ?誤解されんのは?

じゃ誰のせいなんだよ。俺か?ユメか?シホルなのか?モクゾウ?それともメリイ?集団行動してるんだからさ、協調性っていうか、必要だろ、そういうの

俺には欠けてるってか

あると思ってる?

ねえよ

ないのかよ

誰にでも得手不得手があるだろうが。お前はどうなんだよ、ハルヒロ。あ?お前の欠点は?

俺は。。

なんでお前にそんなこと言わなきゃならないんだよ

てめえのことになったらだんまりかよ。俺がお前の欠点に文句つけたか?あ?いいかハルヒロ、たまたまお前が持ちだしやがったから言ったけどな、そうじゃなきゃ俺からこんな話するつもりなんてなかったんだ。仲良しこよしには興味ねえからな。んなごっこ遊び、勝手にやってろよ。お前らが俺のこと嫌いだっつうなら、好きに嫌ってりゃあいい。俺は平気だし。パーティーだからな、役割は果たしてやる。それが集団行動っつうもんだろ。

寝るわ俺。

このシーンがすごくよいのは、主体がハルヒロにあるところだ。確かにランタには協調性がなくて、発言のいちいちにひやひやさせられる。そういうのがパーティーの和を乱している、とハルヒロは思っているわけだ。ハルヒロはランタに対して「誤解されやすい」という言葉を使うが、ランタが悪いと暗に言っている。だから、ランタの反発に対して「誰のせいなんだよ」と返してしまう。"誰かが悪い"、というモデルをハルヒロは既にもっているのだ。しかしハルヒロには自覚がない。自分の欠点を追求されてうろたえてしまうのは、自分が正しくてランタが悪いと思い込んでしまっていたからだ。

またここで考えさせられるのは、ハルヒロの言っていることが間違ってはいないということ。そうは言ってもランタがパーティーの和を乱していることに違いはない(という理屈をいくらでも並べることができる)。話の中でハルヒロは割り切ることができなかったのだが、ここが大きな分かれ目なのだと思う。ランタが悪いから直せということに執着し続けるのか、自分が描いているの"パーティーの和"とは別のありようを探そうとするのか。

これはしかし、前向きであればそれでよろしいという単純な話でもない。話もそのように解決はしない。自分が何を欲しているのか、あるいは欲してしまっているのかを、いつだって自覚しておかなければならないだろう。それでいて初めて、自由な選択をすることができるのだから。